原種の時代
バラの起源は今から数千万年前ともいわれ、実際およそ3,500万年前と推定される化石も発見されています。従ってバラは人類が登場する遥か以前から地球上に存在していました。現在原種として確認されているのは100種余りで北半球に広く分布していますが、特に中国南西部、西アジアに多くあるため、バラの起源地はこの辺りと推定されています。
 紀元前2000年頃にはすでに人々の生活の中に取り込まれていて、当初はその香りを利用する目的に栽培されていたようです。西アジア、地中海沿岸、さらにはヨーロッパ地域では原種あるいは原種の自然交雑や突然変異で生まれたものの内、特に香りの強いものが長い時間の中で選別されて、ガリカ、ダマスク、センテフォリア、アルバといった現代のバラの基となる、栽培原種が盛んに栽培されるようになります。
オールド・ローズの時代
時代が下がって11〜13世紀頃の十字軍の遠征により西アジアからヨーロッパ各地のバラが人為的に移動し、それらの交配により新たな系統が生まれてきます。
 一方中国でも紀元前から観賞用にバラが栽培されていて独自に進化してきました。この中国のバラは四季咲き性やティーの香り、高芯剣弁といったヨーロッパのバラとは異なる性質を持っていました。そして18〜19世紀の植民地化政策に伴い、この中国のバラがヨーロッパにもたらされノアゼット、ハイブリッド・チャイナ、ブルボン、ポートランドさらにはティーあるいはハイブリッド・パペーチュアルといった系統が生まれました。この時期、バラの発展に特に貢献したのが、ナポレオン皇帝妃ジョセフィーヌです。彼女は住まいとなったマルメゾン宮殿の庭に、各地のバラを集め栽培育種させ、多くの新しい品種を作り出しました。現代オールド・ローズと呼ばれるバラの多くはここから生まれたものが多く、品種名にフランス語の名が多いのもそうした理由によります。

モダン・ローズの時代
そして、耐寒性のあるハイブリッド・パペーチュアルと四季咲き性のティーが交配され現代のバラ、ハイブリッド・ティーの第1号ラ・フランスが1867年に誕生します。
 またこれまでのバラには黄色がほとんど存在していませんでしたが、唯一ロサ・フェティダという西アジア原生の野生種のみが黄色の花色を持っていました。この原種が19世紀の後半にヨーロッパに持ち込まれ、1900年に黄色の栽培品種、ソレイユ・ドールが生まれました。今日に見る黄色もしくはオレンジ系統のバラは全てこの品種を祖としています。
 また中国原種のロサ・キネンシスの矮性種、ロサ・キネンシス・ミニマはスペインで交配されミニチュアローズを生み出します。
 一方日本の原種バラも今日のバラに大きな影響を与えています。すなわち、ノイバラやテリハノイバラが欧米に渡り、交配育種されノイバラはポリアンサ系を生みそれがフロリバンダの系統にと発展します、またテリハノイバラはさまざまなつるバラを生み出すこととなります。
 近年、フロリバンダとハイブリッド・ティーの交配からグランディ・フローラ、ポリアンサとミニチュアの中間的なパティオローズ、またオールド・ローズの香りや花姿の良さが見直されそれらに四季咲き性を持たせた、モダン・シュラブの一種とえるイングリッシュ・ローズやロマンティカ・ローズといたった系統が次々と作出され、現在では2万種以上ともいわれる膨大な品種が存在し広く愛好されています。