良い花を咲かせるためには、最適な苗を選ばなくてはなりません。苗そのものの良し悪しも大切ですが、同時に大切なことは、これから植えようとしている場所環境や地域的環境に適した品種を選ぶことです。そうは言ってもそれぞれの品種がどんな生育環境に合うのかは経験をつまなくては分らないものです。そのためにカタログや書籍で調べることはもちろん、販売店の方やすでにその品種の育成経験のある方に話を聞いたり、また最初の1年はいきなり地植えせず、鉢植えにして様子を見るのもひとつの方法です。
苗の種類

1.大苗 
最も一般的で初心者にも安心して扱えるもので、毎年10月の中旬頃から店頭にならびます。前年の冬に芽接ぎをして1年近く畑で育成させているので、接ぎ口も十分活着しているし、株も充実しているので、翌春から立派な花を見ることができます。欲しい品種がある場合は早めに購入しないと品切れになりますが、あまり早くても、植え付けてから年内に葉が展開してしまい、翌春順調に花が見られなくなることがあります。最適な時期は12月中旬以降、十分気温が下がりバラが休眠期に入ったころに購入してすぐ植え付けるようにします。しかし管理の悪い店だと、長い期間店頭に置かれ、水切れをさせたりして苗が弱っているケースもありますので、注意が必要です。できれば、苗の入荷日を確認してそのタイミングで購入するのがベストです。

苗は根の部分をピートモスで包んで、さらにネットで包んだ状態で出荷されますが、最近はロングポットに植えられたものも多い(特に輸入苗)。
枝は2本くらいから4、5本ついたものまであるが2、3本で色艶良く充実した感じのものが良い。他の枝に比べ極端に太い枝の付いたものや、細い枝の多いものは避けたほうが賢明です。また枝の切り口が萎縮したり、枯れこんでいるものや、根の付け根の部分に瘤があるものは癌腫病の恐れがあるのでこれも避けましょう。

2.新苗 
4、5月に店頭にならぶ3号から5号のポリポットに入れられた苗で、その年の1月頃に芽接ぎ等で生産されたものです。従って接ぎ口が十分安定していないため取り扱いに注意が必要なことと、少なくても半年は蕾がついても早期に摘蕾し樹を充実させることを優先させなければならないため、花を楽しむまでの期間が長いのが欠点です。しかし、大苗よりも種類が多く、価格も安いため、慣れた方にはお勧めの苗です。

ほとんどが台木から一枝が伸び、枝先に蕾を持っているものが多い。その枝が太く、あまり間延びしていない葉が多く付いたものが良い苗です。またポットの底から根の飛び出したものがありますが、その色が白く新鮮であれば問題ありませんが、茶色く変色したものは店頭に長く置かれているので避けたほうが賢明です。さらに芽接ぎをした部分はテープが巻かれ保護されていますが、持ち運びや植付けの時にはこの部分を傷めないよう、それより下部を持つようにします。蕾はもったいなく思えますが、樹を充実させることが優先ですので嫡蕾します。ただし花色等を確認する場合など、どうしても咲かせる必要がある場合は、その確認ができたら直ちに五枚葉のところで切り戻します。

3.鉢苗 
花を見ることを目的に売り出される鉢植えのため、店頭に並ぶのは5月、10月中旬以降の花の時期。春に購入した場合、鉢穴からすでに根が伸び出しているような状態であれば花後に植え替えた方が良い場合がありますが、その際は根鉢を崩さないよう静かに鉢から抜いて、一回り大きな鉢に移します。また秋に購入した場合は、冬の植え替え時期を待って、鉢替えや地植えをします。

総体に株が締まって見え葉や茎の色艶の良いものを選びます。また枝の剪定が適切でないため枝が多く重なっているものや、中心部分が混みあっているもの、枝の出ている方向に癖のあるものは避けます。病害虫の有無も他の形態の苗に比べ最も発見し易いので十分注意します。

品種による苗選びのポイント
 一般的なポイント
1.
花の色や形、香りの有無。花期(一季咲きか四季咲きか)。葉の形や色、葉のつき方。
 併せて考えるべき重要なポイント
2. 樹形が植えようとしている場所に適しているか
同じ樹形の分類(ブッシュ、シュラブ、つるなど)でも伸び方や、株の張り方はそれぞれ異なります。
3. 日照はどうか
どんなバラでも最低3,4時間の日照は重要ですが、それでも日陰にやや強いものや、日差しの柔らかなところで見たほうが花色の発色が美しく見える(紫系統の色)ものがあります。
4.

地域や周辺環境によるによる寒暖の差はどうか
同じバラでも、比較的寒さに強いものから弱いものまで、蒸し暑さにも強いものから弱いものまでさまざまで、また日本は地域による気候の差が大きいため、その地域に合ったものを選ぶ事が重要。さらに日本で生産された苗は、その台木に日本原種のテリハノイバラを用いるため、どの地域でも比較的順調に育ちますが、ヨーロッパからの輸入苗はロサ・カニナなどのヨーロッパの気候や土質にあったものが台木として使われているため、さらに気候(蒸し暑さ)などの要因も重なって、ヨーロッパでの生育とは異なった生育や特長を見せるものもあります。

5. 病気への耐性はどうか
バラのよくかかる病気にうどん粉病や黒点病がありますがこれらは同じ環境においても品種により抵抗力が随分異なります。すなわちこれらの病気は、風通しの良し悪しや雨の降り方、気温などによってかなり出現度が異なりますので、地域による基本的環境と品種の適性についての検討が必要です。さらに自身がどの程度バラの世話に時間がかけられるかによって選ぶ品種も異なるでしょう。